お鍋のようなカジュアルなパーティもいいですし、持ち寄りパーティもいいかもしれません。
実際のところ、大層な料理を用意することはないのです。でもフランスのホームパーティの基本的な流れにのって、少し違った雰囲気のパーティーを準備してみるのも楽しいものではないでしょうか。
ということで私の12年のフランス生活の間に経験した数多くのホームパーティのパターンを元に、6人から8人くらいまでの方々をホームパーティにご招待するときの基本的な流れと気をつけたいことをご紹介したいと思います。
もちろん、このパターンが絶対というわけではありませんので、お好きなようにアレンジしてくださいね。
まずはフランス流ホームパーティの基本的な流れを
私が体験したフランス人家庭でのホームパーティの90%はこれからご紹介するような流れでした。なので私がご招待するパーティもこんな流れで準備していました。
- お客様到着→
- リビングで食前酒とおつまみ→
- テーブルに移動して前菜→
- メイン料理→
- チーズ→
- デザート・食後酒→
- コーヒー
さらに少し詳しく説明させてください。
食前酒とおつまみ
ここで初対面の人は紹介しあい、最初の緊張をほどきリラックスしていくことになります。
このアペリティフと呼ばれる食前酒を飲む時間、よく登場したのは、そして私もよく使ったのは「crème de cassis(クレーム・ド・カシス)」と呼ばれるカシスのリキュール。このまま飲むわけではなく白ワインと混ぜて「キール」、またシャンパンと混ぜた「キールロワイヤル」を作って出します。
甘くて飲みやすいので私を含め多くの人が大好きです。またこのカシスのリキュール、フランスではスーパーで簡単に手に入りますし日本でも手に入るのでおすすめです。
さらにりんごの軽い目の発泡酒「シードル」、こちらも日本でも手に入ります。
さらにお酒を飲まない方のためにソフトドリンク、さらにお水もガス入りとガスなしを用意しておきたいところです。
また食前酒と一緒に出すスナックですが、本当に「おつまみ」のような簡単なもので大丈夫です。ピスタチオやアーモンドといったナッツ類、さらにオリーブなどは袋や缶を開けるだけなので重宝します。またプチトマトとハードチーズ、ぶどうの盛り合わせといったところも便利です。
前菜とメイン
次にテーブルに移動して食事が始まるのですが
多くの場合、テーブルにメイン料理のお皿が、そしてそのメインのお皿の上に前菜のお皿を乗せたりします。これはテーブルが華やかになるので、それだけでも気分は盛り上がります。
これらのお皿、前菜が終わったときに、前菜のお皿だけを下げてメインのお皿をそのまま残し、そこへメイン料理を直接取り分けることができます。また料理によっては使い終わった前菜のお皿とメインのお皿の両方を下げて、キッチンでメインのお皿に料理を盛って再び出してもいいでしょう。
足つきのワイングラスは多くの場合、テーブルに大きいものと小さいものの二つ並べます。
チーズとデザート
みんなの食事が終わってひと段落つくと、次はカマンベールのような牛のチーズやヤギのチーズといった柔らかいチーズを用意し、さらにチーズ用にフランスパンを追加します。このチーズの部分は省略してもいいのですが、私はこの「チーズタイム」を後から書く理由でとても便利だと思っているので、いつもチーズを用意しています。
さらに多くのお客さんは食後の甘いものを期待しているので
ここで「フルート」と呼ばれる細長いグラスを用意して、デザートと一緒にシャンパンを出すことが多いです。また甘い貴腐ワインなどがあるときも、ここで一緒に出していました。
そして話も弾みそろそろ「お開き」という頃に、最後にコーヒーを出します。
コーヒーを出すときには、さらにクッキーや小さいチョコレートを添えることもあります。
これがとてもざっくりとしたホームパーティの流れです。もちろん、地域や家庭、またパーティの主催者の年齢によっても様々な違いがあると思うので、これが正解というものではありませんが、この流れで多くのカジュアルなホームパーティの場合、問題なく終えることができると思います。
ではここから、ホームパーティ準備のためにお役に立つかもしれないお話をいくつかご紹介したいと思います。
満腹状態が違うお客様のことを考えて料理の出し方を考える
ホームパーティで一番大変なのは、お料理の準備ではないでしょうか。しかも体も大きくとてもたくさん食べる方もいれば、とても少食の方もいらっしゃいます。
というのもメイン料理が出てきたときに、すでにお腹いっぱいで苦しみながら無理やりメイン料理を食べていただくのは忍びないです。かといって料理が少なくて、帰るときに「お腹がまだすいている」という状態で帰っていただくのも申し訳ないです。
なので私が注意しているのが、、、
最初の「おつまみ」でポテトチップスは考えもの
みなさん、家に到着したときは当然のことながらお腹が減っています。なので食前酒と一緒に出す「おつまみ」、みなさん、かなりの勢いでお食べになります。でもせっかくその後、前菜やメインを用意しているのです。
ここで私がなるだけ出さないように気をつけていたのが「ポテトチップス」。だって、ポテトチップス美味しいですよね。しかもお腹が減っているのでいくらでも食べられるのです。そしてここでポテトチップスをガボガボと食べられてしまうとその後のペース配分が大変になるので。
もちろんそんなことを言っていても、状況によってはポテトチップスを出すこともありますが、出し過ぎないように気をつけています。みんながお腹がいっぱいで残ってしまうメイン料理を見るのは悲しすぎるので。
前菜はみんなが自由にとりわけできるものを
私がご招待するときは前菜はほぼサラダです。フランスでは簡単に手に入る野菜「マッシュ」にチーズやフルーツを組み合わせたり、チコリー(アンディーブ)やルッコラもよく使います。
日本でもチコリーやルッコラは手に入りますし、またお野菜の種類も素敵なサラダのレシピも多いので、あまり悩まずに華やかな前菜を用意することができるのではと思います。
このような前菜のサラダ、大きなガラス容器やボールに盛ったままで、ホステスである私がとりわけずに、ボールのまま座っている人たちに回してもらって、ご自身で取り分けてもらうようにしています。
もちろん私が取り分けてもいいのですが、ここでのポイントは
なのでいっぱい食べたい人のことも考えてしっかりとした量を用意しています。
おつまみを食べ過ぎてしまった方は、ここで前菜を減らすことで調整できますし、また野菜が好きな方、嫌いな方、それぞれここでお好きなように前菜を取ってもらいたいところです。
大食いの方は最後のチーズで調整を
さて私は「チーズタイム」を重宝していると書きましたが、なぜかというと、前菜・メインが終わった後でも少し物足りないなと思っている方は
特にメインが「鴨の胸肉」や「魚のフィレ」、またステーキのような一人のお皿に決まった量のお料理を用意したときには、多くのみなさんはお腹いっぱいになっても、たくさん食べる方には物足りないときもあります。
もちろんカジュアルなホームパーティ、メインのお料理がまだ残っていればさらに取り分ければいいのですが、チーズを用意しておくと、必ずみなさんにお腹いっぱいになって帰宅してもらえるように思えるので。そして、実際のところ食後のチーズ、「別腹」で美味しいのです。
ホステスの力量が問われるかなと思うのは
さて、ここでは自分の身に置き換えて便宜上「ホステス」と書いていますが、「ご招待する側」の心構えということで、例えば、ご夫婦やパートナーでお客様をお迎えするなら役割分担してもいいかとも思います。
さてお迎えする側が気に留めておいたほうがいいなと思うことを5つほど書いてみたいと思います。
食べられないものがないかは事前に聞いておく
ご招待するときに出来るだけ事前に確認したいのは「食べられないもの」があるかどうかということ。
「何か食べられないものある?」と声をかけておくと、甲殻類などのアレルギーがあるかたは事前におしえてくれます。
またとても頭を悩ますのはベジタリアンの方がいらっしゃる場合。事前にわかっていれば、それなりの対応もできますが、基本的にお一人一皿と個別に分けた料理を出すフランス流、その日に「実はお肉はちょっと」ということになると困ってしまいます。
ご自身が慌てないためにも、食べ物の好き嫌いは事前に聞いておいたほうがいいかと思います。
「何がいい?」と聞かず「どれがいい?」と聞く
ホームパーティでご招待客の欲しいものを聞く機会が、おそらく何度かあると思います。1度目はお客様が到着してすぐの食前酒といった飲み物を勧めるとき。さらに食後のコーヒータイム、コーヒーだけでもいいのだけれど、紅茶といった他の飲み物を用意しているならお客様の好みを聞くことになります。
さらに食事のときの水をガス入りにするのかしないのか、またディジェスティブと呼ばれる食後酒を出すことがあればお酒の種類も聞くことになります。
このようなお客様の欲しいものを知りたい時に
なので「キールやキールロワイヤルができるよ、ビールやシードル、ソフトドリンクもあるけどどれがいい?」、または「コーヒー、エスプレッソもあるけどデカフェもあるよ、それとも紅茶?」と聞くようにしていました。
そうすると答える方も答えやすいので。特に最初の食前酒は場がこなれていないこともあって、選択肢がないとなかなか飲みたいものを言うのは難しいです。私自身、お呼ばれしたときに「何を飲む?」と聞かれてどぎまぎして「じゃあ、お水で」なんて心にもないことを言ってしまうこともありました。なので、しっかりとどんなものがあるのかを伝えたいところです。
ホステスの腕が問われるお客様の的確な誘導
さて、ホームパーティの時間配分がよくわかっているのはお料理を作って準備をしているホステスです。招待客のみなさんはこれからの手順など全く頓着していません。
なのでお料理の準備をみながら、そして招待客の到着状況をみながらリビングからテーブルへとお客様を誘導するのはホステスの仕事です。
そしてここで大切なのは
みなさんが好き好きに勝手に座ってくれればいいのですが、初対面の人が多い場合などにはみんなどこに座ろうか決めあぐねて立ち尽くしてしまうことがあります。
そんな時にはホステスが素早く入って、「じゃあ、〇〇さんはここで、〇〇さんはここはいかが?」と席を決めてしまいましょう。その際に出来るだけ注意をしたいのは、男性と女性が交互に座るようになること。
またなかなか会話に参加できそうにない方、初めてやってきた方などは私は意識的に中心に近い席に座ってもらうようにしていました。そうすると会話に参加していなくても、グループから外れた感じにならずに疎外感を感じずにいいかなと思っていたので。
そしてもちろん自分はキッチンへの出入りが便利な席を、ホストとなる夫やパートナーはみんなの会話が盛り上げやすそうな席にしていました。
この座席の考え方もいろいろとあると思いますし、ご招待する人々によっても変わるので、本当にその時々なのですが、もしお客様がご自身で座る場所を決めるのを戸惑う時のために、一応、頭の中で計画を立てておくのをお勧めします。
デザートやワインはお客様が持ってきてくれたものを積極的にだす
ホームパーティーの準備をした時には、もちろんこちらで必要な分のワインもあらかじめ用意していますし、ケーキも買ってあります。
でもお客様の多くはワインを持ってきてくれますし、また予想外に手作りのデザートやケーキを持ってきてくださる方もいらっしゃいます。
ワインなどは多くの方が持ってきてくださった場合、よほど特別なワインでない限り「〇〇さんが持ってきてくれたワイン」と言う必要もないと思いますが、買ってきてくださったケーキや手作りのデザートは、自分が用意したデザートを出す前に「〇〇さんが持ってきてくれた(作ってくれた)ケーキ」と言って出します。
そして持ってきてくれたデザートの量やその場のお腹の空き具合など、いろいろな状況を見て自分があらかじめ用意していたデザートを出すか出さないか、また出すなら出すタイミングを決めたいところです。
大切なのは、お客様がせっかく持ってきてくださったものに対する心遣いといったところでしょうか。
コーヒーを出すタイミングはとても重要
ということはお呼ばれした方々は、基本的にコーヒーが出るまで帰らずに「待って」います。
また招待する側も「これを飲んだら終わりだから帰ってね」という気持ちを込めてコーヒーを出すことになります。
コーヒーはある種のサインになっているので、まだ時間も早くみんなの話も盛り上がっているのに、そこでさっさとコーヒーを出すと「追い立てている」ような印象をもたれるかもしれません。
逆にデザートが終わってから、あまりに長い間コーヒーを出さないと、帰りたい招待客は帰るタイミングがうまくつかめず困ってしまいます。
なのでデザートを出してあまり時間をおかずに、でもうまくタイミングを見計らってコーヒーをだすのがいいように思います。
そして、あまりにみんなが長居して「頼む、そろそろ帰ってくれ〜」と思う時には、とてもにこやかに「コーヒーもう一杯、いかが」と声かけをしていました。これが帰るいいきっかけになることがあるので、コーヒーを出すタイミングをうまく考えたいところです。
ホステスの立場から招待客にやめてもらいたいこと
さて、最後にホームパーティにご招待することもありますが、ご招待されることもあるのではないかと思います。その時に注意したいことを、ホステスの立場からいくつか書いてみたいと思います。もちろん、これは「私の場合」なのでホステスのみなさんみんながそう思っているというわけではありませんが。
約束の時間よりも前には到着しないで
これは私だけでなく、ほぼ「常識」の域に入るほど、みなさんが思っていることだと思います。というのもホームパーティをするとなると、本当にいろいろバタバタと準備が必要なので。
さらに自分自身もお料理をするときに着ているボロボロの普段着から着替えないといけませんし、お化粧もしないといけません。ホッと一息つく時間も必要でしょう。
それがお客様が約束の時間よりも早く到着してしまうと、「えっ、もう?」という感じになってしまいます。
また準備は予定よりも押していることもあるので
ただ、全員が揃わないと食事が始まらないので、そのあたりも注意が必要ですが。
キッチンには出来るだけ入らないで
これは人それぞれだと思いますし、また招待客との関係性にもよります。とても近い関係ならまだいいかなとも思いますが、私は基本的に招待客にキッチンに入られるのは好きではありません。
特にフランスのキッチンはリビングと離れて別部屋になっていることの方が多いです。日本でよくあるようなリビングと一体になっているキッチンはフランス語では「アメリカ風キッチン(cuisine américaine)」と呼ばれていておそらく少数派だと思います。
ということは別部屋になっているキッチンは基本的にはパーティの舞台裏や楽屋で、いろんなものが出しっぱなしになっていてすごい状態になっています。できれば見てもらいたくないのです。
逆に日本ではキッチンと一体型のリビングが多いので、キッチンとお食事のテーブルとの距離はグッと近づきます。けれど、やはりキッチンはホステスのもの。その時の雰囲気からそこへ足を踏み入れるべきかどうか、判断したいところです。
さらに招待客のキッチンの出入りを少なくするためにもホステスが気をつけたいのは
ホステスが長い間中座していると、気のきく人は「大丈夫? 手伝おうか?」とキッチンにやってきてくれますし、みんなが楽しんでいるのに、わざわざキッチンに私とおしゃべりをするためにやってきてくれる人もいます。
とてもありがたいですし、その気遣いもうれしく思います。でもせっかくのパーティ、汚いキッチンで長い時間過ごすことはないと思います。
また、個人的にはパーティが終わった後も、わざわざ食器を片付けてキッチンまで運んでもらったり洗ってもらったりするのも苦手です。これももちろん個人差があると思いますが、私は「お願い、全部置いておいて」と思ってしまいます。
これもキッチンに入ってもらいたくないから、そして片付けは自分のペースでゆっくりとやりたいから。できるなら片付けは翌日に回してもうベッドに飛び込みたいから。まあこんな考え方もあるということで。
深夜11時を過ぎたら帰って、お願い
フランスのホームパーティ、日本やアメリカに比べると7時半や8時からと遅い時間から始まることが多いです。そして、ゆっくりと食事が進むので食事が終わった段階ですでに10時ごろにはなっています。
そして6人から8人くらいの人数のパーティだと、自然にみんなでの話も盛り上がりますし、お酒も入っています。時間はあっという間に経ってしまいます。またパリの終電は比較的遅く週末だと深夜1時を過ぎても走っています。そうすると、本当にみんな帰りません。
朝からパーティの準備ですでにヘトヘトです。さらにパーティ中もいろいろと気を回してさらにヘトヘトです。そしてフランスだと母国語ではない状況でのパーティなのでもうクラクラです。なので11時くらいになったら、正直、もう帰って欲しいです。
日本でのパーティーはもう少し、早い時間から始まることが多いかと思いますが、それでもパーティーが楽しければ楽しいほど、そしておしゃべりが盛り上がれば盛り上がるほど、帰るタイミングを逃してしまいがちです。
もちろん、ホステス側も楽しんでいるのですが、それでもお客様に快適に過ごしていただきたいという気は絶えず使っているかもしれません。
なので、もしお呼ばれすることがあれば、招待している側の状況も少し考えて「いい頃合い」で帰っていただけるとうれしいなと思います。
フランス流のホームパーティについて、いろいろと書いてきました。しかし、ここで最後に強調したいのは、これまで書いてきたことと少し矛盾しているかもしれませんが、基本的にホームパーティは気楽なものだということ。
食前酒から前菜、メイン、そしてデザートという順番は多くのパーティでほぼ守られるのですが、出てくる料理は気楽なものも多いです。例えばメインは間違えることもほぼない作り慣れた日本の「カレー」でも「ハンバーグ」でもいいのです。
自分のできる範囲で、そしてみんなが楽しめることを最優先に考えて、気楽にフランス流ホームパーティを楽しんでみるのはいかがでしょうか?