自分の国、日本でも家やマンションを買おうと思うと、分からないことや不安なこともたくさんあります。これが日本以外の国だともっとややこしくなります。
私たち夫婦はワシントン首都圏に戻って来た機会にコンドミニアム(分譲マンション)を購入することにしました。条件がいろいろあったので不動産屋さんと一緒に20件以上の物件を見て回りましたが
今日は私たちが購入する地域の治安をどのように調べたのかをご紹介したいと思います。
まずは日本とアメリカの治安の違いを比べてみる
日々の生活では忘れていますがアメリカの治安は日本とはレベルが違うよう。よく聞く話で感覚的には分かっていますが、では実際はどうなのでしょうか? まずは実際のデータを見てみましょう。
世界の平和指標でみるアメリカの治安
シドニーに本部を置く世界的に有名なシンクタンク、Institute for Economics & Peaceは毎年、世界の平和指標(Global Peace Index)を発表しています。
この指標、「国内や国外の紛争」「社会の安全度や治安」、そして「軍事への力の入れ方」にかかわる様々な指標を元にしているのですが
もちろんアメリカはテロの脅威にさらされているのでそれで順位を落としているのもあるのですが、それでも大きな差があります。
ちなみに他の「紛争」と「軍事」を加えた総合的な評価ではその差はさらに開き、日本は9位、アメリカは121位となってしまいます。
日本が6位の「社会の安全度や治安」指標、日本よりも安全な国は1位のアイスランド、そしてノルウェー、デンマーク、シンガポール、ニュージーランドと続きます。なるほどやっぱりというところでしょうか。
英語のみになってしまいますが、ご興味のあるかたは「Global Peace Index 2018」の全文をこちらからどうぞ:Global Peace Index 2018
国連薬物犯罪事務所のデータでみるアメリカの治安
さらに国連の薬物犯罪事務所(UNODC: United Nations Office on Drugs and Crime)が人口10万人のうち、犯罪に巻き込まれて亡くなった人数のデータを公開しています。
少し古いですが2016年のものでアメリカは約1万7千人(5.35%)、日本は362人(0.28%)となっています。
また人口10万人のうち身体に深刻な被害を受けた被害者の割合は、アメリカで80万人(249.20%)、日本で2万4千人(19.08%)となっており、こちらも大きなな開きがあります。
ご興味のある方は英語になりますがこのウェブサイトで各国の状況を見ることが出来ます:国連薬物犯罪事務所
もちろん、国のなかでも都市によってさらに地域によっても治安状況はさまざまです。後ほど出てきますが、アメリカでも東京よりも治安の良い都市もあります。
地域の安全度をデータから調べるには
まず、日本で順当な方法は不動産業者さんに「このあたりって治安はどうですか?」て聞くことでしょう。
おそらく不動産業者の個人の感覚といった不確かな情報をクライエントに伝えてはいけない、さらに不当な地域格差をつくりだしてはいけないからだと思います。
となると自力で調べないといけないのですが私たちが使ったのはこんな方法です
NUMBEO
元グーグルのエンジニアによって作られたNUMBEOというウェブサイトがあります。このサイト、不特定多数の一般の人々の情報を集計しており犯罪統計に関しては現在5万7千人の情報を元にしているそうです。
例えばワシントン首都圏で物件を探しているとワシントンDC内、バージニア州北部、メリーランド州南部といろいろな選択肢があります。
このサイトで「昼間一人で歩く安全度」と「夜間一人で歩く安全度」を比べると(数値が高い方が安全)
- ワシントンDC:昼間65・夜間39
- バージニア・フェアファックス:昼間99・夜間75
- メリーランド・シルバースプリング:昼間80・夜間55
同じワシントンの地下鉄通勤圏でも治安状態が違うことがとてもよくわかります。
もちろん治安だけでなく価格、物件の広さ、便利さ、学校などいろいろな他の要素も考えて生活する場所を選ぶのでしょうが、まだはっきりと住む場所が決まっていないのであればご参考にされるといいかもしれません。
ちなみに東京は昼間88・夜間84、大阪は昼間90・夜間85でした。
ご興味のある方はサイトはこちら:NUMBEO
警察のデータを調べる
さて住もうと思っている都市の安全状況を確認し住む都市を決めたとしても、それぞれの都市の中での治安状況は地区によってかなり違ってきます。
私たちの場合は最初からワシントンDCに住むことを決めていたので、知りたいのはDCの中の各地域の治安状況。
ご興味のある方はサイトはこちら:DC Metropolitan Police Department
このサイトにはがワシントン内を細かく地域分けしそれぞれの治安状況を色分けしている地図があって、各地域の治安状況は一目瞭然です。
さらに購入予定物件の住所を入れて、物件からの距離、過去30日から過去1年までの範囲を設定するといろいろな犯罪の発生件数をみることができます。
私たちはそれぞれの物件の住所を入れて物件ごとの治安状況を調べていました。
小さな自治体だとなかなか難しいかもしれませんが、大都市での物件探しだと警察のウェブサイトを訪れてみるのもいいかもしれません。
物件購入前に自分の感覚を使って調べるには
さて、データからだいたいの地域の様子は分かりました。そしてなんとなく住んでみたい地域も決まってきました。ここから大切なのは自分の足や目と耳を使ってその地区の状況を確認すること。ではどうしましょうか。
自分の目で確かめる
もし徒歩で町を歩いてみても安全な地域ならば、やっぱり自分の足で歩いて雰囲気を確認するのが一番です。それが難しい場合には車でやはり周辺地区をまわってみましょう。
道路にゴミが多く落ちていて壁の落書きが多いところは基本的にあまり治安はよくありません。
また定職についていない人々がどのくらい公園や駅周辺に集まっているか、駅から家までの人通りはどうか、家族連れが歩いているかなどの歩行者の状況も見てみます。
さらに、どのようなレストランや小売店があるかによっても地域の住民の雰囲気を知る手がかりになります。アジア系のレストラン、リベラルを「売り」にしているレストラン、子ども用品の小売店、分かることはいろいろあります。
また物件の購入を考える時には「今、この時点」の治安も大切ですが長期的にその地域がどのように変わっていくかの予想も必要になってくるので、そうなってくるとますます考えることは増えてきます。
地域の人に住み心地を聞いてみる
もし状況が許すならその地区で生活している人に住み心地を聞いてみるということもできるかと思います。
もちろん、手当たり次第にいろいろな人に聞いてまわるというわけにはいきません。でも、例えば購入を考えている家の内覧に出かけたなら、そのあたりのレストランで食事をするのはどうでしょう。
あまり忙しい時間でなければ、アメリカのホールスタッフのみなさん、通常はフレンドリーで簡単な会話をすることもできます。もし話しやすそうな状況なら「この辺りの住み心地ってどう思いますか?」と聞いてみるのはどうでしょう。
また内覧に出かけたのがコンドミニアムだと、エレベーターや廊下ですれ違った住民の方や受付に座っているコンシエルジュの方と少しおしゃべりをしてみてもいいかもしれません。
もちろん基本的には「悪い話」は出てきませんが、それでもその会話から受ける印象というものがあります。
地域の「タウン情報」を参考にする
もちろん、今の時代、いろいろな情報をインターネットから手に入れることができます。その中で、街の「タウン情報」を提供しているものがあれば、それを見つけるのはどうでしょうか。
例えば私たちの住むワシントンDCで私が参考にしたのは「PoPVille」というサイト。ワシントンDCの中の小さな地区ごとにいろいろな情報が載っていて、その中には最近、その地区で起こった犯罪や事故もあります。
さらに新しくオープンするお店情報もありますし、その地区の問題点についてもそれぞれの記事について寄せられたコメントをみると分かることがたくさんあります。
このようなタウン情報を提供しているウェブサイトがそれぞれの地域にあるかもしれません。このようなサイトから得られる情報を総合的に感じて、その地域の治安状況を判断してみるのはどうでしょうか。
家やマンションの購入はおそらく人生の中で一二を争う大きな買い物です。もちろん、ゆくゆく「売る」という手はありますが、それでも購入にかかる労力や費用を考えると、慎重に物件を選びたいところ。
もちろん条件には「子どもの教育」や「職場への距離」といった、それぞれの状況に応じて大切なことがいろいろとあると思います。しかし、アメリカで生活をするのであれば、やはり「治安」もしっかりと考えて、ご自身が納得された地域で生活されるのがいいかと思います。
今、ワシントンDCの中で生活していても、この都市の中でも治安状況はいろいろ。橋を渡っただけで雰囲気がガラリと変わる場所もあります。
また物件選びに大切なのは長期的な視点。街の様子は日々、変化をしていてい、これまでとても治安が悪かったところが急速に「ポップでクールなエリア」に変わったりもしています。
しっかり情報収集して、良い物件と出会えますように。